咲かなかった菖蒲と涙の五百円玉
五月五日、端午の節句、
お店に飾る為に、菖蒲を用意していた。
3日の火曜日に2本買って飾っていたけれど、
1本は咲かず、咲いていたもう1本も、5日の朝には、しぼんで枯れてしまった。
5日の日に咲いた菖蒲をお店に飾りたかったので、
朝、慌てて、お花屋さんに買いに行った。
いつも定休日が、木曜日だから、休みじゃないかな?と思ったけれど、万が一と思って、行ってみた。
予想どおりに、お休み。
けれど、人影が!!お花屋さんがお店の中にいらした。
お休みなのに、とても申し訳なかったけれど、今日には咲くと言っていた菖蒲の方を選んで、買って帰った。
お昼頃仕事をしながら、菖蒲を見ていたけれど、時間が経っても、花が開いているようで、なかなか開かない・・・
部屋よりも、外の太陽に当てた方がいいのかな?と思い、外に少しだけ出してみたりもした。
かえってそれが良くなかったのか、菖蒲は開くことがなかった。
咲かない菖蒲は、お客様に気づかれることもなく、いつも置いてある、ミニチュアの観葉植物の方で話が弾んだ。
その後、3時頃にも、いつものお客様がいらっしゃる。いつも一週間ごとに来て下さるお客様だけど、チップを置いていって下さった。
申し訳ないからと一度断ったら、五百円を置いていって下さった。
お見送りの時、瞼が潤み震えた。
心地よい、BGMの音楽のお陰もあったかもしれないけれど、認めて貰えたようで、とてもとても嬉しかった。
チップはいつもとてもありがたいけれど、またいつもと違う特別なチップ。
ただ五百円玉を、見つめた。
そして夕方は、疲れながらも、菖蒲の写真を撮った。
咲いていなくても、さすが菖蒲、凛とした美しさで、写真に写ってくれた。
咲かなくても癒やしてくれた菖蒲。
今年の五月五日は、記憶に残る日になってくれた。